本土と彦島に挟まれた三日月型の静かな水路"小門(おど)海峡"。
関門海峡の大瀬戸を大型の貨物船や豪華客船が行き交い、その間を縫うようにして小さな漁船が小門海峡の小瀬戸へと入る。この小さな瀬戸に面したまちの階段を歩く。
前回の記事
いきなり気になる坂道。
「報済園」。前から行ってみたかった場所。
この伊崎の地はかつて夜焚の舟遊びで賑わい、維新志士らもよく屋形船での遊覧を楽しんだと言われているが、報済園はとある化粧品問屋が娘のために建てた別荘である。
立派な洋館と美しい庭園があり、政治家や財界人らも多く訪れたというが…
数年前に解体され、今やトマソン化したこの階段だけが残る。
朽ちてなお薄くしいその姿から、在りし日の栄華が偲ばれる。
反対側の入口には「松楽庵」と書かれた門扉。詳細不明。
いい雰囲気の路地を抜けていく。
植物に取り込まれつつあるアパート。
…瞬間、言葉をなくした。
インダストリアルだが無機質な感じはあまりなく、かといって温かみを感じるようなレトロさなど微塵もない。
ただただ、無骨…
土っぽさと、錆の赤色。
時折感じる潮の香りが、海のすぐ近くだということを思い出させる。
暴力的なノスタルジア。
家屋の合間から小瀬戸を望む。
歩みを進めても、先程の強い郷愁感が頭から離れない。
どんどん「廃」に引き込まれる。
これ以上は進めなさそうなため引き返す。
瀬戸の一番奥には造船所。
この壁から感じる「凄み」は、まちの歴史そのものだ。
寮か社宅か。既に廃墟と化している。
外国の方も多かったのだろう、部屋名のプレートが英語だったり中国語だったり。
電球は普通にセンサーで反応してすごくドキッとした。
住宅地のそれとは違う階段。
造船所の前を抜けて漁港方面へ。
今回はここまで。
なんか今回は階段成分より廃墟成分のほうが強かったかも。
階段も廃墟も好きです。海も。
草ヒロ(という単語はあまり好きではない)もいいけど、海ヒロもいいよ。
それでは。
つづき