おなかがよわいお坊さんはあわてない

おなかを壊しやすい僧職系男子、まち歩きのススメ。

下関市 : 新地遊郭跡 その5

Twitterの相互フォロワーさんのツイートで、新地西町の某有名遊郭建築の解体が始まったとの情報を見て、仕事の合間を縫って慌てて現地へ。そこで見たのは既に半壊し内部が顕わになった建物と、最盛期の幻影。

オーナーとの奇跡的な出会いもあり、おそらくどこにも出ていない貴重な内部の写真も撮らせていただくことができた。これは単なるノスタルジーではなく、価値ある資料としての記録。

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上記過去記事のサムネイルにも使っている妓楼(?)っぽい建物は、遊郭クラスタにはお馴染みの物件であろう。

下関市。かつて人も金もこの地に集まった時代があった。

エネルギーの密度が高いまちには、必ずと言っていいほど歓楽街がある。社交の場として、労働者の日々の疲れの受け皿として、駅からほど近いこの場所に花街が発達した。

 

前置きが長くなってはいけない。まちの歴史については過去記事を見ていただくとして、兎も角にも到着に到着。

西側から件の建物を見やる。

 

左側、カフェー調の建物は入り口の建具が外され、パッチワークのように統一感のない増改築をされていた右側の建物には防塵シートがかけられていた。

 

上記サムネイルと同じアングルで。

角部にあった妖しげな艶を放つ建物は既に半壊していた。

 

シートの裏側へ回る。重機が入り、ツギハギ建築のカラフルな外壁はもう見えない。

 

あまりの衝撃に戸惑いが隠せず、何度も周囲を行ったり来たりしていると、近くを歩いていたおじさんが近づいて話しかけてきた。

 

おじさん「兄ちゃん、何撮りよるん?」

 

……ああ、しまった、不審者感丸出しだったなぁ。こういう負の(あえてこう書きます)歴史がある場所では冷やかしの目を嫌う人が多いのを分かっていたのに。配慮が足りなかった、と思い、

ぼく「ここにあった素敵な建物が壊されてると聞いて写真を撮りに来ました。ご不快に思われたようでしたらすみません、すぐに写真は削除します」と答えると、

 

おじ「こんなんが好きなんか、変わっとるなぁwwww中入ってもええよ。」

 

???

 

思わず怪訝な顔をしてしまう。

 

おじ「だってこれ俺が壊しよるんやもん。これうちの所有物」

 

ほぁ!?マジすか?喜びの余り小躍りを披露し、感謝を伝えて立ち入らせてもらった。

イケおじ「なんかほしいもんあったら持って帰ってええよー。」

サンキューイケおじ!いざ内部へ突入!

 

内部の写真はおそらくネット初出ではないか。いや、ネット以外の資料でも見たことがない。非常に貴重である。

 

まずはコチラから入ってみよう。

ぜひ過去記事の同じ場所と比べながら見てみてほしい。

※けっこう砕けたやりとり風に書いてますが、きちんとお話をさせていただいた後、所有者さん立ち会いのもと撮影してます。この日は解体作業をしておらず、たまたま様子を見にきた所有者さんがいらっしゃったから入ることができましたが、無許可での侵入は絶対におやめ下さい。

 

 

引き戸が取り払われて三和土が露わに。

左側は1階部分、右側はすぐ階段で2階へ。戸を引く方向で違った通路になる。

客同士が鉢合わせしないための配慮か。

 

1階部分から。天井がアーチ状になるよう板が掛けてあった。

 

土埃が積もっているが、三和土にはタイルが見える。

「お邪魔します」と言って一歩足を踏み入れた瞬間、中からネコチャンが飛び出してきて死ぬほどビビった。

 

入ってまず左に一部屋。床はあちこち抜け落ち、油断すると踏み抜いてしまいそうなので身動きが取れずまともな画角で撮れなかったのが悔やまれる。

奥に見えるドアは、建物正面から見たときの左側にあるドアだと思うが、外から見るとガラスなんてないよな…二重になっているようだ。ということはここで遊女が客と寝ていたのだろうと思われる。

 

建物中央にもう一部屋。更に向こうには他の部屋も見える。

かなりの荒れようであるが、これは解体工事によるものではなくもともと朽ちていた感じであった。ミントグリーンの壁が「廃」の空間に映える。

 

とにかく床を踏み抜かないように気をつけながら奥へ。向こうに勝手口が見える。

足元に転がっているタンスが邪魔で進めないので一旦引き返す。

 

中央の部屋から手前の部屋を見る。丸く穿たれた大きな穴は、装飾窓のあった名残だろう。

 

内部から玄関の方を見る。

簡易的な流しと大きな円柱。1階部分はおそらく、手前側の部屋を除いて従業員の居住部…というか休憩場所的なところだったのではないだろうか。

 

暗い、埃っぽい、狭いのはもちろんだが、とにかく暑い!滝のように流れる汗を拭いながら、新鮮な空気を求めて外へ。ホントあちぃ。

ちなみに午後から仕事があったのでこのときはスーツ着てましたが、シャツはびしょびしょ、革靴は見事に傷だらけになりました(T_T)

 

続いて2階へ。急な階段は朽ちておらずしっかりとしていた。

 

突き当たって左に折れる。暗いのでケータイのライトを点けた。

 

いきなり大きな装飾窓。しかし積み重なった布団や建具でどこにも進むことができない。見えた範囲では階段を上がった先の廊下を挟んで手前に1部屋、奥に一部屋。廊下の先には戸が見えた。

 

奥の部屋に手を差し伸ばしてシャッターを切る。荷物だらけだ。

 

手前の部屋は天井が落ち、陽光が差し込んでいた。

 

どこへも進めないので引き返そうと振り返ると違和感を感じた(コワイ話じゃないよ)。

狭くて引きが撮れないので変な画角で申し訳ないが、右側が先程上ってきた階段。

階段登った先に引き戸なんて必要か?まぁ普通の住宅とは違うだろうけど…

ん?少し開いてるな…動かそうとスライドするも全然動かない。

 

仕方がないので手だけ差し入れてカメラのシャッターボタンを押すと、下へ降りる階段が。どういう造りなんだよ…

 

先程のこの壁の向こうね。

引き戸によって片方が見えなくなる階段…これも玄関部と同じく客同士が鉢合わせないための工夫であろう。

 

この建物はこれ以上行けるところがないので、別の建物に入ってみよう。

オーナーのおっちゃん曰く、「この建物の両隣は人が住んどるけぇ、その隣なら入ってもええぞ」とのこと。5件(と言っていいのかわからないぐらいツギハギの建物だが)並んだうち、1、3、5件目を解体するらしい。2、4件目は未だお住まいの方がいると。

 

確かに隣接する両隣の建物は外壁をサイディングでリフォームしてあるが、カフェー建築の名残が見られるような感じだ。

 

というわけで一番西側のこの建物にお邪魔する。

 

生活の痕跡が見られる。奥に廊下と階段があるようだ。

もしかして1軒挟んでさっきの建物と繋がってる?挟まれた建物には繋がっていないようであるが…一体どうなっているのか。

 

さて、今回はここまで。

次回は一番東側、この一角の角部に当たる建物を見ていきたい。

それでは。

※なおこのとき、近所で事件があったのかすごい台数のパトカーが集結しており、このあと歩こうと思ってたエリアには規制線が張られ、ちょいと物々しい雰囲気でした。

 

つづき