おなかがよわいお坊さんはあわてない

おなかを壊しやすい僧職系男子、まち歩きのススメ。

下関市 : 新地遊郭跡 その6

下関市、新地西町の某有名遊郭建築解体に寄せて。

儚くも消えゆくかつての桃源郷、まちの見た夢…。

前回の記事

さて、いよいよ本丸に乗り込む。と言っても角部の「あの建物」は既になくなってしまっているのだが。

こちら側に面した道路は不自然に高く盛り上がっており、下水道を通したのでは無いかと推察する。何かで見た昔の写真ではこうはなっていなかったように思う。

ブロック塀の向こうは一段低くなっており、門扉を開けて降り玄関へ。

 

玄関上の欄間は取り外されており、オーナーさん曰く、「古美術好きの人が持って帰ったよ」とのこと。

 

引き戸を開けて中へ。逸る気持ちを抑えられない。

 

弧を描く上がり框にはモザイクタイルが敷き詰められる。

 

時代は下り、かつての稼業を終えて、生活の香りで上書きしようとも隠しきれない妖艶さが漂っていた。

 

奥へと進む。散らばっているものの中には比較的新しい(おそらく10〜15年ぐらい前のもの)も見られる。近年まで人が住んでいたのか、物置代わりになっていたのか。

 

更に奥に進むと不整形な部屋にキッチンが。

1階はさほど広くないようだ。間取りから言っても客をとっていたとは考え難い。

 

玄関横の階段を昇り2階へ。

 

結構急な階段だ。左側に見える細い通路はすぐ壁に行き当たる。

 

向こう側は既に崩された部分。廊下は途中で途切れており、まっすぐ進めばストン、だ。

 

in to the sky…

 

気を取り直して反対側へ。建具はすべて取り外されている。

 

突き当たって左に折れる。

 

向かい合う丸窓。いくつもの部屋が並ぶ。

間違いない、ここで"遊び"を行っていたのだろう。

 

一つ一つの部屋は大きくはない。四畳半の畳スペースに床の間+押入れの六畳間。

 

ちょっとギモンなんだけど、部屋と部屋とは隔てるのは壁一枚、向かい側は廊下を挟んで建具一枚だと、嬌声が漏れ聞こえちゃうんじゃなかろうか。

 

突き当たってY字路。

 

Y字路の脇には御便所。

 

真っ暗だったので中には入らなかったが、タイルの可愛らしさが目を引く。

 

手洗いのタイルもかわいい。

 

電子ピアノと「大人の科学」の付録。

どの部屋も基本的には同じ作りのようだ。

 

散らばった荷物が邪魔でY字路の先には進めなかったが、向こう側に積んである布団は…

あ!前回進めなかった場所!ここに通じてたのか…

 

おおよその間取りは把握できた。しかしすごい作りだな…。

 

この建物と、既に崩されている建物の間に通路があった、1階は繋がっていないようで、2階部分のみがくっついている。

 

壊されてしまった部分をぐるりと回ってみる。

階段の手摺に控えめながら装飾があることから、やはりこちら側が"表"だったと考えてよいだろう。

 

諸行無常

 

前回の記事でも書いたが、オーナーのおっちゃんは「何かほしいもんあったら持ってってええよ」と言ってくれたものの、これと言って何もない…(^^;)

強いて言えば、この壊された建物の壁にあった青い小窓(下の写真)を探したが、瓦礫に埋もれて見つけることができなかった。残念。

 

さて、仕事の時間も迫ってきたことだし、ちょこっとだけ周辺の様子を観測して帰ろう。そう思い、この付近に訪れるときにいつも見ている建物(置屋だったり特飲店っぽい感じのだったり)をいくつか巡ってみたが、そのうち数件は解体され更地になっていたり、今まさに建て替え工事中だったりした。

特に衝撃を受けたのは、大通り沿いにある大きなカフェー建築がなくなっていたこと。

ここ。新地の花柳街の中でも、特にモダンな雰囲気のある建物が連なっていたのだが…

 

関連記事

この記事で紹介したあたり。

 

この並びのちょうど角、大型の建物が2軒更地になっていた。

しかし別れがあれば新たな出会いもある。

 

建物がなくなってしまったことによって顕れたパッチワークの壁面…惚れた。

 

さて、今回はここまで。

それでは。