儚くも消えゆくかつての桃源郷、まちの見た夢…。
前回の記事
さて、いよいよ本丸に乗り込む。と言っても角部の「あの建物」は既になくなってしまっているのだが。
こちら側に面した道路は不自然に高く盛り上がっており、下水道を通したのでは無いかと推察する。何かで見た昔の写真ではこうはなっていなかったように思う。
ブロック塀の向こうは一段低くなっており、門扉を開けて降り玄関へ。
玄関上の欄間は取り外されており、オーナーさん曰く、「古美術好きの人が持って帰ったよ」とのこと。
引き戸を開けて中へ。逸る気持ちを抑えられない。
弧を描く上がり框にはモザイクタイルが敷き詰められる。
時代は下り、かつての稼業を終えて、生活の香りで上書きしようとも隠しきれない妖艶さが漂っていた。
奥へと進む。散らばっているものの中には比較的新しい(おそらく10〜15年ぐらい前のもの)も見られる。近年まで人が住んでいたのか、物置代わりになっていたのか。
更に奥に進むと不整形な部屋にキッチンが。
1階はさほど広くないようだ。間取りから言っても客をとっていたとは考え難い。
玄関横の階段を昇り2階へ。
結構急な階段だ。左側に見える細い通路はすぐ壁に行き当たる。
向こう側は既に崩された部分。廊下は途中で途切れており、まっすぐ進めばストン、だ。
in to the sky…
気を取り直して反対側へ。建具はすべて取り外されている。
突き当たって左に折れる。
向かい合う丸窓。いくつもの部屋が並ぶ。
間違いない、ここで"遊び"を行っていたのだろう。
一つ一つの部屋は大きくはない。四畳半の畳スペースに床の間+押入れの六畳間。
ちょっとギモンなんだけど、部屋と部屋とは隔てるのは壁一枚、向かい側は廊下を挟んで建具一枚だと、嬌声が漏れ聞こえちゃうんじゃなかろうか。
突き当たってY字路。
Y字路の脇には御便所。
真っ暗だったので中には入らなかったが、タイルの可愛らしさが目を引く。
手洗いのタイルもかわいい。
電子ピアノと「大人の科学」の付録。
どの部屋も基本的には同じ作りのようだ。
散らばった荷物が邪魔でY字路の先には進めなかったが、向こう側に積んである布団は…
あ!前回進めなかった場所!ここに通じてたのか…
おおよその間取りは把握できた。しかしすごい作りだな…。
この建物と、既に崩されている建物の間に通路があった、1階は繋がっていないようで、2階部分のみがくっついている。
壊されてしまった部分をぐるりと回ってみる。
階段の手摺に控えめながら装飾があることから、やはりこちら側が"表"だったと考えてよいだろう。
諸行無常。
前回の記事でも書いたが、オーナーのおっちゃんは「何かほしいもんあったら持ってってええよ」と言ってくれたものの、これと言って何もない…(^^;)
強いて言えば、この壊された建物の壁にあった青い小窓(下の写真)を探したが、瓦礫に埋もれて見つけることができなかった。残念。
さて、仕事の時間も迫ってきたことだし、ちょこっとだけ周辺の様子を観測して帰ろう。そう思い、この付近に訪れるときにいつも見ている建物(置屋だったり特飲店っぽい感じのだったり)をいくつか巡ってみたが、そのうち数件は解体され更地になっていたり、今まさに建て替え工事中だったりした。
特に衝撃を受けたのは、大通り沿いにある大きなカフェー建築がなくなっていたこと。
ここ。新地の花柳街の中でも、特にモダンな雰囲気のある建物が連なっていたのだが…
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この記事で紹介したあたり。
この並びのちょうど角、大型の建物が2軒更地になっていた。
しかし別れがあれば新たな出会いもある。
建物がなくなってしまったことによって顕れたパッチワークの壁面…惚れた。
さて、今回はここまで。
それでは。