おなかがよわいお坊さんはあわてない

おなかを壊しやすい僧職系男子、まち歩きのススメ。

北九州市若松区 : 上野海運ビル(1)

かつて日本一の石炭積出港であった若松の往時の隆盛は凄まじく、海岸沿いには今なお多数の近代建築が。まちのシンボルでもある赤い橋に見守られながらどっしりと佇む煉瓦造りのビルで、「大正ロマン」の意味を知る。

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若松のアイコンの一つといえば、真っ赤な躯体の「若戸大橋」をまず思い浮かべる方も多いだろう。

若松と戸畑を隔てる洞海湾に架かる吊り橋。1962年の開通当時は東洋一の長さであったという。上の写真は若戸大橋を通行中、ピントの合わせ方を知らない妻が助手席から撮ったものです。

今年に入って国の重文に指定されましたね。

 

若松はかなり栄えたところだったので、近代建築の他にもアーケード商店街(市場)に階段、スナック街に遊廓跡・赤線(青線も)、銭湯に階段と、何をまち歩きの主軸にしてもテーマに事欠かない稀有なまちである。これまでぼくもちょこちょこ歩いていたのだが、「そのうち近代建築特集や商店街特集の記事を書こー」って思ってても、あまりにも多すぎて全然手がつけられなくなってたので、少しずつ放出していくことにした。

 

というわけで今回の目的地、上野海運ビル。

午前中仕事してて夕方近くになってから出かけたので少し陽が傾いている。

 

大正2年竣工、旧三菱合資会社若松支店として建てられたビルは、ドイツから輸入した煉瓦を用いていると伝えられる。外観だけで言えば、いわゆる近代建築然とした風格ではなく、質実剛健とした重厚感のある佇まい。

 

このときは年明けすぐ、三が日は過ぎたもののまだ世間はお正月ムードの漂う中での訪問だったので、至るところにお正月飾りが掲げられていた。

 

煉瓦に這う配管。インダストリアルな質感が嫌いな男の子はいない。

 

ビルの正面は現役のオフィスで、側面が一般の入り口。

 

トマソン化したドアと集合ポスト。

 

階段を昇っていこう。

 

柱頭の飾りと計器と。不思議とアンマッチな感じはしない。

 

踊り場の窓から外を見やる。傍らにはまちのシンボル。

 

振り返って息を呑んだ。

 

外観からは想像もつかないような瀟洒な吹き抜け。立ち並ぶ鋳鉄の柱と装飾の入った手摺は竣工当時のもの。

歩くたびに軋む床の音が館内に響く。更に上を見上げれば…

 

光天井に嵌め込まれた幾何学模様のステンドグラス。
それを通して降りてくる、優しい光に満たされた空間の荘厳さ…この場所には、ある種の「信仰」にも似た美しさがあった。

 

3階へ。

手摺や柱だけではなく、階段も竣工当時のままだそう。
アイボリーとダークブラウンの優しいコントラスト。

 

ステンドグラスが頭上に近づく。

筆舌に尽くしがたい造作の美。

 

内側を見下ろす。現在は上の海運のオフィスの他、各部屋にはテナントとしてアパレルショップやデザイン事務所、カフェなどが入っているが、いずれも感度の高い(という言い方は好きではないが)お店ばかりである。
あ、今調べたらぼくの好きなブランド扱ってるお店もあるやん…今度行こ。

反対側に回って。

ドラマの詰まった階段だ…。

 

さて、ちょっと喉が乾いたのでお茶でもしよう。

"Asa Cafe"という名のカフェで、洞海湾を行き交う船を眺めながら一休み。

 

今回はここまで。

それでは。

 

つづき