筑豊…と聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、田川や飯塚、直方といった、かつて炭鉱で栄えた地域のことではないだろうか。
「筑豊商店街」は八幡東区、山路ICからほど近い場所に存在する。戦前に興り、今年で99年を迎えた、北九州市内に現存するうち最古の市場である。今なお営業を続ける店舗が残るこのアーケードには、常連たちの賑やかな声と笑顔が絶えない。
ぼくがこのアーケードの存在に気づいたのは3年ほど前、近くで仕事があり、その道中に前を通りがかったとき。当時は今のように、辺鄙なところ 味わい深いがマイナーなところをわざわざ調べて出向くほど徘徊趣味を拗らせてなくて、行った先に面白そうな路地裏を見つけるとぶらぶらしてた程度だったのだが、このときはセンサーが反応した。だって…
こんなの見逃すハズがない。
その後も何度か訪れていたものの、写真をあまり撮っていなかったため、昨年の秋頃に写真撮影を再開した折に、ふと再訪してみた。
例によって暗所の撮影苦手マンなので、ブレブレなのはご容赦ください…。
間口の広いアーケード入口。ブルーの鉄骨は、陽が当たって色褪せた部分へ向かってグラデーションを作る。
メイン通りはそれほど長くない。70mほどだろうか。
いきなり気になる横通り… とりあえずメイスントリートを見終わってから来よう。
おしゃべりが大好きな若山商店のおばちゃん。
この市場の名前の由来は、創業者が直方出身であったことからと教えてくれた。
カラフルな装テンをくくりつけるロープが、革細工のステッチのように見えてくる。
こちらの通りも気になるが、また後ほど。
今でも営業してたら絶対ここで食べてくのに。
反対側へ出た。表側と比べ控え目な主張。
さて、満を持して。
ああ…。
この感傷を表す言葉を持ち合わせていない。
消防法的にどうなのかわからないが、水入りバケツが置いてあった。
こちらの通りではどのお店も看板デザインがほぼ同じ。扱う商品は右肩上がりのレイアウト。
ここでしか買えないものなど、とうの昔になくなってしまっている。
それでもここに来る理由……
肉、野菜、魚、果物に花…それぞれの目利きたちの仕事が光る。
外へ。
さて、もう一つの宿題をすませよう。
こちら。
!?
想像できなかった風景に理解がついていかない。
小屋組の高い天井。
今、目の前にある光景のはずなのに、まるで誰かの遠い記憶を覗いているよう。
単なる懐古主義ではない、リアルなレトロがそこにあった。
来年で100周年。もう二度と上がることのないシャッターがこれ以上増える前に、もう一度訪れてその姿を目に焼き付けておこうか。
それでは。