下関のウォータフロント、唐戸エリアに多く現存する近代建築群。
再開発によって変わっていく街の中で、往時の威容を残したまま変わらぬものたち。
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【蜂谷ビル(旧東洋捕鯨株式会社下関支店)】
設計:不詳
竣工:1926年
日本の捕鯨事業の中核を担った東洋捕鯨株式会社の事務所建築。下関における捕鯨業の隆盛を偲ばせる。
一部増築されている部分を除き、国の登録有形文化財となっている。
小高い丘の上にぽつんと佇む様は、海峡の街を見守るかのよう。
モルタル仕上げの外壁に、タイル張りの間柱がアクセントとなる。
建物も素晴らしいが、テナントに入るフレンチ「レストラン 高津」も素晴らしい。
何度か行ったのに、全然写真撮ってなくてこの1枚だけ…
完全予約制、12:00と19:00の一斉スタートでおまかせのコースのみ、16,500円〜。
建築も料理も、真の職人の仕事は美しい。
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【旧逓信省下関郵便局電話課庁舎】
設計:逓信省営繕課 (山田守?森泰治?)
竣工:1924年
国内で現存する唯一の電話局建築。
フルーティングの入った石柱が並ぶファサードが重苦しく見えず、軽さすら感じるのは、柱頭がなく梁で覆われていないからであろう。
ゼツェシオンの影響を受けた「分離派風局舎」を象徴する塔屋部のアーチ。
当時は女性の社会進出がはじまっており、電話交換手は人気の職業であったため、塔屋のある3階部分はここで働く女性の休憩室だった。
現在は映画史に燦然と輝く下関出身の女優、田中絹代を顕彰する「田中絹代ぶんか館」として公開している。
建物西側、石造りの階段室は格子まで美しい。
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【旧宮崎商館】
設計:不詳
竣工:1907年
石炭商の事務所として建てられる。下関港が給炭港であったことを示す建造物。
なんと言ってもまず目を引かれるのがこの2階バルコニー部分の5連アーチ。
白御影石の要石/迫石など、前回紹介した同地区にある英国領事館と似た意匠が見られる。
かつてこのバルコニーから見た町並みはどのようなものだったのだろう…
先に紹介した旧逓信省下関郵便局電話課庁舎との並び。
かつて唐戸地区のメインストリートであった西之端大通にそびえる2件の美しい建物。
どちらの建物も放物線を描く塔屋や、連続するアーチ窓など、曲線の使い方が印象的である。
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【旧リンガー邸(藤原義江記念館)】
設計:不詳
竣工:1936年
関門海峡を一望できる丘の上に建つ白亜の建築は、もとはホーム・リンガー商会の支配人の息子の私邸であった。
後に「われらのテナー」と呼ばれ、藤原歌劇団を主催した藤原義江の記念館となる。
古川薫の直木賞受賞作"漂流者のアリア"にちなんで、氏の原稿なども展示してある。
木陰のアプローチ。門扉にかかるアーチは…
「この道は いつか来た道〜」
見学は要予約、館内撮影不可であるが、ご厚意で1枚だけ撮らせていただいた。
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【めぐみ幼稚園 第Ⅰ園舎(旧下関バプテスト教会)】
竣工:1930年
丘の上に建つ幼稚園の第1園舎は、元はヴォーリズよって設計された教会であった。
細い路地を抜け、更に階段を登った先にあり、引きが取れず全景を収めることが出来ない。
塔屋・会堂・側廊部分によって構成されている。
第1園舎から更に上へ進む。見えてくるのは…
【めぐみ幼稚園 第2園舎(旧福音書店)】
竣工:1905年
かつてはバプテスト教会に派遣された宣教師邸たったと伝えられる。長崎から移設した説もあるようだ。
コロニアル様式の美しい洋館。
第1園舎、第2園舎ともに国の登録有形文化財である。
もともとあったバプテスト教会はというと…
【下関バプテスト教会】
竣工:1957年
麓のほうへ移設された。
最後にヴォーリズ3連発でした。
さて、今回はここまで。
それでは。
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