おなかがよわいお坊さんはあわてない

おなかを壊しやすい僧職系男子、まち歩きのススメ。

萩市 : 芳和荘とその周辺

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明治維新胎動の地、萩。

多くの維新志士たちを排出し、新時代の礎を築いた長州藩の政庁。港町には宰判が置かれ、廻船業や水産業の一大拠点として繁栄した。今なお重伝建として継承されるまちに存在した、とある遊郭…その貸座敷であった宿にて行李を解く。

先日からちょこちょこ記事を書いていたが、2021年10月某日、長門市向津具半島の漁村集落を巡った。

 

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実際にはこの合間にもいくつか立ち寄ったところがあるのだが、あまり深く掘り下げるような散策が出来ていないので、再訪した折に記事にできればと思う。

 

さて、長門市から東へ移動、萩市にやってきた。思いのほか到着が遅くなってしまったが、重要伝統的建造物群保存地区である浜崎エリアへ。

朝から夕方にかけて、食事も摂らず階段巡りに熱中していたので、ちょっと疲れてしまい、散策はまた明日、ひとまず投宿することにした。

 

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本日のお宿、「旅館 芳和荘」。築100年を誇る、かつての遊郭建築。

ちなみにぼくは遊郭について専門的に研究しているわけではないため、間違い等あったらご指摘いただきたく思います。

 

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シブいですねぇ。

 

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隣の駐車場から。

結構モジャってます。

 

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門の石柱には鉄製のアーチが掛かり、看板が掲げられる。

 

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玄関に差し込む陽光が、長年磨かれ続けた床に反射して、もうこれだけで泣きそうになる。

 

宿を一人で切り盛りされるご主人が出てきて、チェックインの手続きを済ます。

数年前までは朝食付きのプランもあったのだが、現在は素泊まりのみ。

いろいろ割引が適用されて、なんと宿泊代は2500円。さらに市内で使える2000円分のクーポンまで貰えたので、実質500円みたいなもんですよ。こんな歴史的なお宿に泊まれるっていうのに、ホントにイイんですかね…

とりあえず先に部屋に荷物を置いて、後でじっくり館内を見させてもらおう。

 

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案内された"中津江"という名の四畳半。部屋にはそれぞれ市中の地名が銘打たれる。

客室はすべて、かつて遊女が客を取った部屋である。

他に少し広めの部屋もあるのだが、予約時に一番小さな部屋を希望した。

 

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流石に歩き疲れていたので、30分ほどローカル番組(と言っても同県に住んでるので珍しくもなんともないのだが)を見ながら休憩。宿に入って旅装を解き、気持ちがほぐれるこの時間が至福である。

 

さて、館内を見ていこうか。

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界隈ではよく知られた建築であるため、ご存知の方も多いであろうが、中庭をぐるりと囲むように配置されたこの廊下からの眺め…素晴らしい。

 

 

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疲れなど何処かに忘れてしまうこの景色。

 

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腰の高さほどしかない欄干には、「う」「ら」「う」「ゆ」「し」「う」「よ」「ち」と掘られる。

右から読んで「ちようしゆうらう」……「長州楼」。妓楼だった頃の屋号である。

 

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築100年ともなれば、あちこちに歪みが出るのは仕方がないが、それも含めて愛おしい。

 

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夢中でシャッターを切る。降り注ぐ夕日が眩しくて、廊下との明暗が強く露出が整わない…

 

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さて、そろそろ出かけようか。

日中歩き回って汗をかいたからか、とにかくビールが飲みたくて仕方がない。

 

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またこの階段がカッコいいのよ…

 

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階段下は下駄箱。

 

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あたりはちょっと暗くなってきた。

門に向かって右側、格子のある場所はかつての張見世で、数年前までは宿のご主人が小料理屋をされていたそう。

 

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わ!隣の建物かっこいいな!これは何だったんだろう…

 

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さーて、どこのお店にしようか…

 

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結構お店あるな…迷う…

 

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1番目は?

 

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お?萩に映画館ってあったのね。雰囲気いいなぁ。

ちょっと覗いてようか。

 

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あ、飲み屋入ってますねぇ。もうここにしましょう。

 

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何食べても美味いなぁ! 某グルメサイトで調べたらなかなか好評なお店でした。

 

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食べ処 こづち

軽く食べて何件かハシゴするつもりでしたが、大将や常連さんたちと話が弾んで、気がつけばベロベロに。宿に帰ろう…。

微醺を帯びた顔に秋の夜の風が心地よい。

 

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千鳥足で帰る道すがら、町家の建物の虫籠窓に灯りが…ん?

 

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1階はコーヒーボーイ(山口ローカルのコーヒーショップ)だけど、2階はRICOH

調べてみたらリコージャパンの事務所でした。かっちょいいなぁ。

 

さて、宿へ戻ってきた。

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ライトアップされた中庭が出迎えてくれた。なんと贅沢な…

 

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かつて客はこの回廊から、遊女とともに手入れの行き届いた中庭を眺めていたのだろう…。

 

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ヒャッハー風呂だぜぃ!

 

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"武者風呂"と呼ばれる城壁に囲まれたような岩風呂で一日の疲れを癒やす。

今日はよく歩いたなぁ…

 

 

入浴後、浴衣でコンビニへ出かけまた酒を買う。

部屋に戻って、そういえば2021年最初の宿泊だということに気づいた。コロナ禍というのもあったが、昨年はなんだかんだ忙しくてこれまで全く外泊出来てなかったのだ。例年は月1ぐらいで何処かに泊まっていたというのに。

 

この日の宿泊客はぼくのみ。初秋、部屋の窓から見る萩の夜はとても静かで、ひとり飲む酒の味がやけにはっきりと感じられた。遊女の霊が部屋に訪ねてきてくれないかと期待したのだが、ただただ静かな夜は更け行くばかり。

布団に入れば、明日の予定も今日の振り返りも出来ぬままいつの間にか眠りに落ちていた。

 

つづき