おなかがよわいお坊さんはあわてない

おなかを壊しやすい僧職系男子、まち歩きのススメ。

島根県大田市 : 大代町の町並み

峠道を抜けると、時代を遡ったかのような感覚。外界から隔絶されたかのような僻地といっても差し支えのないような山間部に、思いもよらず開けた古い町並み。

小さな集落に残る、モダンな医院建築を訪ねた。

前回の記事

川本町から北へ、目指すは大代町の大家という集落。

 

山の上にかかる霧の間をすり抜けるように進んでいくと、田んぼと川の良い風景が見られたので車を停めてみる。

……ん?なんかある…

 

 

なんかすげーところに建物ある。お社かな?

 

更に車を進めていくと、離合(これ方言らしいね)するのも難しいような峠道が続く。ぽつりぽつりと民家が見られたが、集落を形成するほどではない。このあたりの生活は大変だろうな…

田んぼの間の水路に架かる橋3種。

 

 

道中、湯谷温泉 弥山荘という温泉旅館があるが、そこから更に山の中へ入っていく。暫く進むと道沿いに廃墟となった建物を見つけた。

 

 

ここも温泉旅館だったっぽいな。誰か情報知ってる方教えて下さい。

 

 

こんな道がずっと続いているのだが、あたりに民家がないようなところで野犬?が飛び出してきてビビった。

 

 

川本町から車で30分ほどだろうか、どうやら目的の集落へ辿り着いたようだ。

大代町の大家集落は中世頃には既に名が見られるほど古いらしい。江戸期には牛馬市で大きく栄えたようである。

さて、まずは目当ての近代建築を見に行きましょう。

 

 

そうそう、これが見たかったのよ、大正初期ごろ築と伝わる和洋折衷の岡医院…ってええぇ!解体されてるじゃん!

 

 

この洋館が医院部分であろう。既に瓦やサッシは外され、ふきっさらし状態。

管理する方もいなくなって久しいとは聞いていたが、まさか解体途中の現場に出くわすとは…

 

 

玄関前から和風家屋部分を見る。

大きな仏壇が目に入った。裏手には庭園があるようだ。

 

 

こちらは在りし日(2022.7)の岡医院。この和風の門と左右の洋館とのコントラストが見たかったのよ…残念。

 

 

気になるのは、看板に記されていた施工期間に6月◯日〜7月◯日と記されていて、半年近く経過していること、何らかの理由で工事が停止しているのだろうか。

今現在どうなっているのか、ご存知の方いたら教えて下さい。

ツイッターで検索してみても解体情報は見つからなかったので、目にすることのできる最後の機会だったかもしれない。

 

裏手の方に回ってみる。和風建築部分も大きく、かなりのお屋敷だったことが伺える。

 

 

さて、集落を見ていこう。

小規模ながら商店街が形成され、かつては賑わいが合ったことを伺わせる。

 

 

そして大きなお屋敷が多い。といってもそのいくつかは無住で管理されていないようではあるが。

 

 

現在は外へ働きに出る方ばかりなのであろう、平日朝の集落内には、散歩する御婦人が数人おられただけで静かなものだった。

 

 

和風建築に洋風のコンクリ壁、このスタイルは島根県、とりわけ石見地方でよく見られる気がする。

 

 

通りの端には大きなお寺。まるで門前町のようだ。

 

 

装テンが劣化して紙垂のように架かった商店は結構大型。

この地区の生活を支える存在であったのだろう。

 

 

側面を見ると住居部分?と連なっており、古くは庄屋だったのかと思わせる。

 

 

午前10時、ようやく"晴れ"といっても良さそうな雰囲気になってきた。

朝露を含んだ少し湿った風が頬に冷たい。

 

 

町家建築を美味くモダンにアップデート。生かした仏壇屋さん。

 

 

このあたりの建物も、そのうち重文なんかに指定されるのではないかと思わせる佇まい。

 

 

医院建築目当てで訪れたのだが、これほど素敵な町並みが見れるとは思ってもいなかった。アクセスの悪さは否めないが、また期待と思わせる魅力がある。

 

 

惜しむらくは、景観の保全を目的とする動きが生まれなさそうな雰囲気であること。

観光地ではないし、住人の数も減っていく一方であろう。

 

 

よく「旅先ではお金を使って地域に貢献!」みたいな啓蒙をツイッターなんで見かけるが、そもそもお金を消費できるところがなく、それすら叶わない。

ただ、このような集落があったということを記憶と記録に残して、誰かの目に留まるようにするだけ…。

 

 

さて、今回はここまで。

 

 

岡医院横の高台から。

 

それでは。