おなかがよわいお坊さんはあわてない

おなかを壊しやすい僧職系男子、まち歩きのススメ。

長門市 : 長門湯本温泉(4)

まちのシンボルとして愛された共同浴場は、近代的で瀟洒なデザイナーズ温泉として再生した。

生まれ変わった"神授の湯"の真価はいかに。

前回の記事

祭りの夜。そぞろ歩きは続く。

知らないうちにおしゃれなバーができてたりするが、あまり夜遅くまで賑やかな土地ではない。

祭りの会場から離れると喧騒は薄れ、音信川のせせらぎと虫の音が心地よく響く。

 

こんなとき夜に強いカメラが欲しいな、と思うのだがシチュエーションが限定的なので買うことはないだろう…たぶん。

 

某リゾートホテルの前を通る。

 

以前載せた竹林の階段とは別の階段。こちらからも駐車場にアクセスできるが、やはり雨の日は厳しいものがあるだろう。

 

川辺に家族水入らずのひとときを見る。

 

そこに颯爽と現れる中年男性の姿が!

 

別に団欒をぶち壊そうとそういうのじゃなくてね、足湯に浸かろうと思っただけです…

あと片手に持ってる缶チューハイ(2本目)飲みきらないと恩湯にも行けないし…

 

というわけで恩湯!

※浴室内は撮影禁止のため画像は恩湯HP(https://onto.jp/)から

 

浴室内はシャワーブースと浴槽が完全に分かれている。浴槽奥には注連縄が張られ住吉大明神が祀られており、岩盤から源泉が湧き出づるさまを眺めながら静かに入浴することができる。恭しく、神聖な気持ちで"神授の湯"をいただくのだ。

浴槽はそれほど広くなく(リニューアル前も広くはなかった)、定員8名程度を想定しているそうだ。

やや深め(1mほど)で中腰になって入浴する。腰をかけられる場所もある。

 

画像は長門湯本温泉 公式観光サイト(https://yumotoonsen.com/)より

 

肝心の湯質はというと…やはりこれはさすがというほか無い。県内最古の温泉として長い歴史の中で愛され続けてきた理由がわかる。

少し青みを帯びたアルカリ性単純温泉はすべすべで、これまでさんざん思うところを吐露してきたぼくだが、この点に関しては何の憂いもなく素直に素晴らしいと思える。やはりこの湯が大好きだ。

泉温は体温よりやや高いぐらいのぬる湯。岩盤湧出の泉源の他、足元湧出の泉源もあり、非常に鮮度の高い湯を楽しめる。

 

この足元湧出の泉源は、以前の建物を取り壊した際に新たに発見されたもの。元来、足元湧出の温泉というのは温度管理が難しいとされているが、これが奇跡のように入浴に適した温度で湧いているのだからありがたみも倍増。

湧出量自体はそこまで多くないが(1分辺り130リットルほど、礼湯を閉める際にすこし増えたらしい)、常にオーバーフローできるように計算された湯坪は極上の空間。

 

湯上がりはコーヒー牛乳をキメる。

休憩場はガラス張りで外から丸見えのため、中年男性が旅館の浴衣のまま横になるのを許してくれるような空間ではない。世間の目はいつだって厳しい…


先程も書いたが、リニューアル前は¥200程度だった(と思う)入浴料は、現在は¥900に。

これを高いと思うか安いと思うかは人それぞれである。改装にかかった費用と施設の維持費を考えるとこのあたりがちょうどよいラインかとも思う。以前、オンラインで混雑状況や当日の温度が確認できることを書いたが、これはさほど泉温が高くないため長湯をすることが想定され、広くはない浴槽が人で溢れかえるのを防ぐためかと考えられる。それもあってこの価格設定なのかな(回転率が悪くなるから客単価を上げざるを得ない)。

しかし過去の値段や、公衆浴場だったということを知っている人からすれば「なぜ?」と思われても仕方がないだろう。

 

そして周辺の旅館の立ち寄り湯のほうが安いのであれば、そっちにお客さんは流れてしまうのでは…?確かに洗練されたデザインのインパクトは強いと思うが、少なくともぼくは一度で満足かな。二度は入らないと思う、きっと。

 

宿に帰りましょう。星が綺麗だな。

 

利重旅館と恩湯は目と鼻の先。

 

ただいま。

 

長門湯本の夜景と、部屋の映り込み。

これ最高の部屋では。

 

もう1本飲んだら寝ましょうか…

 

おやすみなさい…

 

んで、朝。
早く起きたので朝食の時間まで読書する。

 

朝餉がおれを呼んでいる。朝食会場へ。

 

健康で文化的な朝食。

 

さて、荷造りしてチェックアウト。

お世話になりました。

 

時刻は8時45分。いつもならこれから何処か街歩きをした後帰るのだが、この日は自宅で午後から仕事があったため帰路につく。ふえぇ…

 

横から見てもカッコいいぜ利重旅館。また来ます。

そして午前10時には帰宅…

 

 

別の日。

長門湯本温泉の縁起に深る関わる大寧寺(たいねいじ)へ。

何回も前を通っていたが、10年ぶりぐらいに来たわ。

 

温泉の縁起については以前述べたが、この寺の縁起はまだだったな。

かつて西の高野とも呼ばれるほどの隆盛を誇った曹洞宗名刹

 

 

長門国守護代であった鷲頭弘忠によって開かれ、大内義隆が家臣であった陶隆房の謀反を受け、終焉を迎えた地。

秋は紅葉の名所として多くの人で賑わう。

 

今回の目的はこちら。

国内に2例しか見られない2径間桁橋の石刎橋である「盤石橋」。

その文化財的価値が高く評価されている。

 

防長三大奇橋の一つに数えられる。(他の2つは岩国の錦帯橋防府の枡築らんかん橋もしくは山口に存在した虹橋とも)

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いわゆるゲルバー工法?ってやつかしら。それが体系付けられる前から存在していたというのだから、前述の枡築らんかん橋にしても、この地の石工の技術の高さがうかがえる。

 

次は秋に来よう…

 

苔むした境内は、視覚的に涼しく感じられる(実際にはこの日とても気温高かったです)

 

 

というわけでまたまた別の日、桜のシーズン。

またやってきました長門湯本。これは駅前の商店(たぶんやってないと思う)。

昔はここで切符買ってたらしい。

 

この日は原田屋さんへ。前回入れなかった大浴場リベンジじゃ!

 

カメラ忘れたんでケータイで撮りますわよ。

前回お祭りやってた公園では、今日も地元ミュージシャン(?)によるライブイベントが開かれていた。

 

例のごとく迷路のような館内を歩いて…

 

これですよ、待ちわびていたのは。

 

宝石見つけちゃった。

足元から湧き出る湯は常にオーバーフロー。外は行楽日和、花見客で賑わっていたが、浴室内は貸切状態、ライブの喧騒は遠くに小さく聞こえるばかり。

ああ、至福のとき

 

しっかり堪能しました。

 

ライブはまだ続いていたようだ。オリジナルだろうか、なかなか素敵な歌が聴こえてきた。リズムを刻むペタッとした音色のカホンに、アコースティックな音色のギターと男性ボーカルが重なる。

音信川に舞う桜の花びらを眺めながら、ここで一杯やれたら最高だな…

 

 

これまで厳しい意見も交えながらこの長門湯本温泉に対して思っていることを書き連ねてみたが、ぼくの私見はともかく、この再生計画についてはコロナ禍というあまりにも特殊な状況を挟んだため一概に成否を判断するのは難しい。長門市の年次記者発表によると、(コロナ禍前に比べ)着実に訪問客・宿泊客は増えてきているので、一定の功は奏しているように思う。県外からの利用客の割合が多いのもよい兆候なのかもしれない。前回書いた、定期的に開催する夜市なんかも良い試みだと思う。

しかし、長門湯本内のとある旅館のスタッフさんとお話する機会があったので、ズバリこの件について聞いてみたところ、「うちみたいな古い旅館では新規のお客さんはほとんど増えてないねぇ…。某リゾートのことはよく知らないけれど、まちに若い人が観光に来て少し活気が出た気がするよ。でもあのホテルのお客さんはそこでおしまい、他の宿には泊まらないし施設外でお金を使うことは殆どないんじゃないかな?」と言っておられた。

 

この記事を書くにあたって、新しいものに理解を示さず、古いものだけを盲目的に「良い」と感じてしまういわゆる「懐古厨」のようになってしまっていないか何度も自問した。できるだけ客観的に評価を下せるよう、いろんな記事に目を通してきたつもりだ。その上で、再生計画が必要だったのは間違いないとはいえ、某リゾートグループにかなりの裁量を委ねたというのは、このまちの誇りを放棄したように感じられてしまうのだ。誇りで腹は膨れないが、果たしてそれが正解だったのか、この先も注視していきたいと思う。

 

実は今後、わが町下関にもこの某リゾートグループの参入が決定しており、ウォーターフロント地区にホテルを建設予定であるが、この計画も当初案では比較的低価格層のシティホテルブランドの予定だったのが社長の視察を経てファミリー向けのリゾートブランドへと変更された。これまで現地を見ずにプランニングしてたのかという呆れを感じ得ない。

 

いままでのんびりゆるくやってきたブログなので、こんなに暑苦しくてうざったい文章を書いた記憶はなく、お読み苦しい点も多くあったかと思うが、それも我が郷土への愛が深い故だと、読者諸賢には平にご容赦頂きたい。

 

それでは。

つづき